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  台湾植民地政策と霧社事件 Ⅰ


  
中華民国                                                                                
     

    
                〈事件現場。意外と狭いスペースということが分かる 2008 1 6〉

 

 
   (事件現場の脇には、断崖絶壁があり逃げられない) 

 

    
  
       〈当時のモーナ ルタオと像〉 

 
          〈当時の霧社集落〉

 
    〈現在の集落 セブンイレブンの看板が印象的だ)

 
       〈集落を南から北に眺めたところ)   

路線バスは急勾配の道を、一気に駆け上がった。すると急に勾配がなだらかになると同時に、集落が現れた。警察官が現れてバスを止め、なにやら検問めいたことをはじめた。

「こんなに早くは、着くまい」と私は思ったが、「霧社」という地名の入った看板が目に入った。「霧社むしゃ についた」。私は、「降ります」と中国語で叫んで、バスを慌てて飛び降りた。

「霧社 むしゃ」とは、1930年10月27日台湾中心部の山中で日本人約140人が、現地の山地民族に殺害された「霧社事件」の地(海抜1148メートル)である。一瞬にしてこれほど多くのの日本人が、しかも首を刎ねられ皆殺しにされるという事件は、当時の日本を震撼させた。台湾における、最大にして最後の抗日蜂起事件である。

なぜ、こんな事件が? そして、現在現地はどうなっているのだろうか? 私にとって三度目の台湾訪問の今回、ようやくにして足を踏み入れることが出来たのは20081月6日の事である。

 ①事件現場

事件は、この地の「学校運動会」の会場が襲撃されるという形で発生した。学校とは「霧社公学校」(小学校は日本人が通学、公学校は山地人が通学)を指すが、当日は台湾神社の祭日にあたり霧社小学校の日本人40名と霧社公学校の連合運動会の形をとり、山岳地帯である辺境8か所の「蕃童教育所」の子供達を含めた合計300数十名の子供たちと、その保護者そして地域の公的機関の人々が顔をそろえていた。その「ハレの場」が、一瞬にして修羅場と化した。

襲撃したのは、台湾の山地少数民族タイヤル族のリーダーモーナ・ルータオ莫那魯道 タイヤル系セーダッカ・マヘボ社)に率いられた、6つの蕃社(部落)約300名の戦士たちであった。支配者であった日本人だけが攻撃対象とされ、男女・年齢の区別なく首が刎ねられた。子供の犠牲者は、62名と言われている。

現場の公学校跡は現在電力会社(村の真下に水力発電所があるようだ)の事務所とその敷地になっていたが、猫の額ほどの実に狭い空間であった。北側は断崖になり、深い谷底が真下に見える。「これでは、逃げ道もないではないか」

現場から200㍍ほど西に「碧血英風」と表された門が建っている、敷地内には「抗日英雄」と刻まれたモーナ・ルタオ(莫那魯道)の像と、彼の遺骨が納められた墓などがある。墓の中には、事件後山中で自殺した彼の遺骨が実際に入っている。
 
 
この事件は、台湾総督(第13代石塚総督は辞任)府だけではなく日本政府を驚愕させた。1895年の下関条約で日本は台湾をその支配下にいれ、すでに35年が経っていた。当初の日本の植民地経営は困難を極めたが、年月を経るに従い植民地経営は順調に経過した。

この植民地経営は「理藩政策」と呼ばれ、特にこの地域はこの政策の先進地域とされていた。徐々に原住民に対する差別的政策が修正され、日本語での命名や日本語教育を中心にした「皇民化」政策(教育)へ移行しはじめた時期であった。従って一見順調に見えた日本の政策は、ここで見事に裏切られたことになる。

台湾総督府と日本は、その威信にかけても徹底した事件の後始末をはじめた。まずは計三千名の軍隊と警察による鎮圧部隊が送られた。狭い部落に兵士があふれ、飛行機からはビラがまかれた。

「ハヤクコウサンスルモノハ コロサナイ。 
 コウサンスルモノハ テツポウヲステ 
 
リョウテヲアゲテ ムシャバンシャヘ デテコイ」と。

    
ここでは毒ガスも、使用された可能性が高い。

  ■霧社への行き方
 ポーリーの町が基点となる。ここまでは台中からがもっとも便利であるが、台北からも直接バスの便が出ている。
 ポーリーからも一時間に一本程度のバスの便がある。料金は72元。
  
               
           〈この日のバスのチケット)                            〈まかれたビラ)  

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