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   ウイグル族 未来への道 ウルムチ
                               

  
新疆ウイグル自治区                                   十勝毎日新聞にて連載          
   
   
     〈2009年来日した際のラビィア氏 NHKより〉               〈自警団  ウルムチ駅周辺で  2011 8 12 撮影〉
       
              
 
 
   〈平和安定を強調する8月5日のカシュガル日報
                     和かい の文字が躍る〉


 
 
       〈テレビに頻繁に流れる「政府広報」

    
         〈ウルムチ人民公園内の自警団
 
 

国家を持たないウイグル族は、20世紀以降も二度独立を試みてきた。「東トルキスタン共和国」が、彼らの目標とする独立国家である。「私たちは、トルキスタンという言葉を使うこともできません。うっかり使うと本当に警察が来ます。でも必ず独立します。現在は待っている時期なんです」。カシュガル市内で聞いたある市民の言葉には、力強さがあった。

7月の一連の襲撃事件は、カシュガルのものは「単なる喧嘩から」、ホータンのものは「平和的デモが警察に弾圧されたことから」と、現地のウイグル人は捉えている。ところが中国政府は、アフガニスタンやパキスタンのイスラム原理主義グループから支援を受けている「東トルキスタンイスラム運動〈ETIMパキスタンに本拠地〉」を事件の首謀者とほぼ断定している。なるほどパキスタン国境への検問が、厳しかったわけである。しかし私に話したウイグル人は、「テロ組織なんてあるはずがないんだ、全然ないよ」と、両者の主張は全くかみ合わない。

現在、一つのキーワードがある。「和諧 わかい」という言葉である。話題の多い中国高速鉄道「和諧号」にも使用されているこの言葉は、中国語の意味としては「調和」である。民族紛争解決のスローガンとして、現在この言葉が国内に溢れている。テレビのコマーシャルにも頻繁に流れているが、どうも「綺麗ごと」にしか映ってこない。それほど両者の溝は深い。

中国政府が「テロ戦争の最前線」とまで形容する、新疆ウイグル自治区。現在この自治区2000万の人口のうち、ウイグル族850万人漢族750万人と両者は拮抗しているが、いずれ漢族がウイグル族を抜き人口の上でも優位に立つことは疑いようがない。政府は両者の溝を埋めるために、自治区の「経済特区」化を進めようと躍起であるが、豊かになっているのは漢族だけでウイグル族は取り残されたままになっており、むしろ逆効果となっているのが現実である。

私には一つ気になることが残っていた。首府ウルムチで二年前の騒乱の際に、「2万人に及ぶウイグル人男性が当局に連れ去られたまま、いまだに戻ってこない」という話である。二年前世界ウイグル会議のラビアカーディルさんが、来日した際に語った内容である。

私は英語の堪能なあるウイグル人に、尋ねることができた。彼は迷わず答えた。「間違いなく本当です」。私は翌812日、カシュガルからウルムチに飛んだ。

ウルムチは、人口180万の近代都市である。その半数はウイグル族のはずであるが、姿が少ない。警備態勢が敷かれているとはいえ、特に若い男性の姿を目にすることはなかった。街を歩くウイグル女性たちも、表情も暗く集団で寄り添うように歩いている。公園、ホテルなどの入り口には、「持ち物検査上場」のようなものが例外なく設置されている。

そして、私の心を最も暗くしたのは集団で巡回している「自警団」の姿であった。女性を含む漢族市民が警棒を持ち、町の中を警備しているのである。カシュガルでも目にしたが、関東大震災の時に組織された日本の「自警団」をイメージしてしまうなんとも絶望的な風景に私は思えた。

811日夕刻、滅多に雨の降らないカシュガル市内は雷雨に襲われた。雨が「あられ」に変わり、子供たちは歓声を上げていた。通りの軒先で雨宿りをしていると、一人のウイグル人が「日本でも、降りますか」と尋ねてきた。「もちろん、降りますよ」。「地震もありますよね。今年は本当に大変でしたね」と、優しい言葉をかけていただいた。
 私は「ありがとう。私もあなたたちの独立を願っていますよ」と、心の中で礼を言った。


   
    〈行き交うのは漢族ばかり ウルムチ人民公園で)      〈イスラム教徒の原点カシュガル中心にあるエイティカール寺院 〉

     
                          〈未来を担うウイグル族の子供たち  カシュガル市内で〉  

   

    
              〈万年雪を頂く天山山脈を超えるとウルムチはもうすぐ  2011 8 12〉              


                         
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