HOME〉Nepal                                                 Nepal >Janua〉2013



            
     パシュパテイナート
                             
人は何も残さない

  
ネパール                                                                      
    

    
   渇水期のバシュバティナート。聖なる河バグマティもゴミの山になっている。地元の見物人が多いことにも驚かされるが、
   手前に見える野生猿の遊ぶ姿が印象深かった。2013 1 5

  
 

   
  より上流部は、カーストの位の高い人向けになっている。


 
    私はこれから火葬される一つの遺体を見つけた。

 
          遺体はまず川に運ばれていく。

  

   
 
   足が清めれた後、衣類などがはぎとられ
               男性であることが分かった。
 

 仏教が誕生したインドネパール地域では、歴史とともに戒律の厳しい仏教徒は減少し大半を現在はヒンドゥー教徒が占める。その比率はインドでは90%近く、ネパールでも80%を超えている。近年のネパール王政の崩壊後ヒンドゥー教はこの国での「国教」の地位を失ったが、国内の多数派であることに変化はない。

しかしインドと異なりネパールの特徴として言えるのは、ヒンドゥー・仏教・ラマ教(チベット仏教)が、お互いに融けあいうまく「共存している」ことである。ヒンドゥーだから、仏教だからという線引きが弱く、対立関係も少ないように感じた。

「人はヒンドゥーに生まれ、ヒンドゥーに滅びる。輪廻転生、死は悲しむべきものではない」という。つまり滅びた人間は次々と生まれ変わると言う思想があり、ヒンドゥーでは死を全うすれば火葬にふされる。
 ヒンドゥーの「火葬場」で名高いのは、インドバラナシのマニカルニカガートである。かつて訪問し火葬を拝見したが、撮影は固く禁じられていた。

ネパールには撮影も許可されている火葬場があることを記憶していたが、まさかカトマンズ市内にしかも国際空港の近くにあるとは、私は訪問直前まで気が付かなかった。

私はカトマンズの旅行社と連絡を取り、訪問当日の通訳をお願いした。3時間35ドルで話は決まった。15日午後1時に通訳の方とホテルのロビーで待ち合わせをし、早速タクシー(300)でパシュパティナート寺院へ向かった。

ここはインド世界を代表するシバァ神寺院である。1000年を超える歴史が積み重なっている。外国人は寺院には入れないため、始めから火葬場(アルエガート)を臨む聖河バグマティ川(ガンジスの支流)の対岸を進む。

早速火葬の煙が目に入る。そして甘い匂いを感じた。
「あっこれだ」。それは
20年近く前に一度経験したバラナシのあの火葬の匂いと、同じものであった。
 河岸には
6台ほどの火葬台が並んでいる。北側の上流にいけば行くほど身分の高い人が焼かれるという。20016月に発生したかのネパール王族殺人事件(ナラヤンティティ王宮事件)で犠牲になられた王室の方々もここで荼毘にふされた。

「私たちの国では、宗教にかかわらず墓を作りません。地元で死者が出ると地域の広場で火葬にするのです」と、通訳さん。つまり「火葬」は、極めて日常的な光景と言うことになる。

「ここで火葬にする費用は、約1000円ほどです。あちらに死を待っている人の建物があります」。私がその建物に入ると臨終間近の女性がおり、周囲を家族たちが取り囲んでいた。

私は黄色の布にまかれ、今まさに火葬される遺体を見つけた。親族の男たちがタンカで、河岸に運ぶ。足を川の水で清める最後の儀式が執り行われる。黄色の布がめくられると顔が見えた。男性である。
 そして次々と身につけていた衣服や医療機器が取り外され、無造作に聖河バグマティ川に投げ込まれていく。渇水期のこの時期はこれらの衣類がゴミの山のようになり、聖河を埋めていた。

火葬が始まると、口の中から炎が見える。口の中に燃える特別なものを入れるらしい。遺体は組まれた木材の上に置かれているが、その後次々と遺体の上に藁がかぶせられ更には木材の台座の下にも藁が敷かれ遺体は燃えていく。
 煙があたりを多い、足だけが燃え残っていくのが印象深い。こうして人は燃え朽ちていく。最後は残った遺骨なども聖なる河に洗い落とされていく。人は何も残さないのである。


     
       口の中から炎が出ていることに驚く。2013 1 5

  

   
         多くの藁がかけられ、煙がすざまじい。                     足の先が最後まで燃え残る。2013 1 5

  
                              BEFORE〈〈      〉〉NEXT


inserted by FC2 system