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    経済発展の道
          イシククル湖と海水浴

                
                               
  
キルギス共和国                                         十勝毎日新聞にて連載予定                                            
 
  
                 〈イシククル湖で泳ぐ人々。50キロ先の対岸に雪山が連なっている。 2012 8 3 撮影〉 
      
              
 
 

 
       〈海水浴場が点在している〉

 
  
 〈標高1500㍍のため30度を超えることはないという〉

  
  〈シベリアからやってきたというロシア人客 
                 私のロシア語テキストに大喜び〉
 

私が日本人であることが分かると、多くの人々が「それでは海がありますね」あげくは「海の中にありますねえ」などと声をかけてきた。この地域の人々には遠く離れた海への憧れは、相当なものである。

 キルギスにも実は、海水浴もできる海がある。正確には湖であるが琵琶湖の9倍もの面積を誇るイシククル湖である。ソ連の軍事施設(魚雷工場)等があり長く外国人に門戸を閉ざしていたこの湖は、30年程前にNHKの取材班に戦後初めて紹介され注目を浴びた。玄奘三蔵が1400年前に冬でも凍らぬ「熱海」と紹介し、湖底に古代都市がそのまま沈んでいるというロマンに満ちたこの湖に私は長い間是非訪問しようと考えていた。

 首都ビシュケクから乗合タクシーで260(850)四時間余り、北岸の中央部に中心地チョルポンアタがある。湖岸の小さな町を予想したら、とんだ大間違い。広大な地域に海水浴場を備えた保養地が点在している。炎天下に荷物を背負っての宿探しは、難渋を極めた。空室ありの民宿が軒を連ねているが土曜日と重なり、どこも満室である。なんとか海の家のようなところに潜り込ませてもらったが、近隣のロシアやカザフなどから大量の海水浴客が押し寄せていた。

 連日快晴とはいえ、標高1500㍍を超える湖岸では朝晩は長袖が必要なほどに冷え込む。水温も冷たく日本の海水浴のようにはいかない。それでも人々は憧れの海と夏を同時に満喫しようと、人々は夜も泳いでいる。50キロ南の対岸には、テルスケイアラトー山脈の5000㍍峰の雪山が見え、後ろを振り返ると北側に聳えるクンゲンアラトー山脈の4647㍍の主峰が迫り、氷河が流れ出ているのが分かる。確かに絶景である。氷河を見ながら海水浴とは、現代のシルクロードは様変わりしている。

 建設中の宿泊施設を、数多く目にした。日本の高度成長時代を彷彿とさせるが、この地域の経済状況は決してよくない。

これといった産業を持たないキルギスでは、人口500万のうち100万人以上が出稼ぎに出ている。その大半はビザの要らないロシアでの単純作業である。そしてGDP28%を、彼らの送金が支えている(タジクでは実に40)という現実がある。月収の平均が13000円ほどということを考えると、この保養地にやってくる人々の多くは富裕層とロシア・カザフ等の外国人ということになる。

ウズベキスタンの場合は、更に事態は深刻である。現在上級公立学校で国語を教えるマラヤクライホナさん(25)は、「今年市内バス料金が、300スムから500スムになりました。賃金も上がっていますがインフレは酷く、生活は大変です。ウズベクの60%の男性が、海外に出稼ぎに出ています。ロシア・トルコ・カザフ等です。村に若い男性の姿が、ないんですよ」。

ロシアがビザなしで旧ソ連諸国の労働者を受け入れていることが大きな救いであるが、失業者の数も多い。キルギスでも、職に就けない若者の不満は解消されていない。

実は私がイシククル湖を訪問した前日(83)、利用していたビシュケク市内のゲストハウスで事件があった。宿泊客の日本人青年二人が、市内で地元の若者二人組に襲われ突然暴行を受けたのである。午後7時ころの、まだ人通りのある時間帯である。幸い大事には至らなかったが、高まる社会不安はこの地域の将来に暗い影を残している。
                             続く 


    
         〈寝るだけできる海の家のような宿泊場所。 2040円もしたが泊まれただけよかった。 宿の人々はみな親切だった〉
                                         
     

               
〈4647㍍峰がそびえる北側。山の向こうはカザフスタン。2012 8 5 撮影〉

    
                     〈このようなアトラクションもある。2012 8 4 撮影〉


                         
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